――桝田さんは『勇者死す。』も含めて、ゲームを通してなにか伝えたいメッセージみたいなものはあるのですか?
桝田氏:メッセージ性は言うほどはないんだよ。
――そうなんですか?でも命を扱うというようなテーマを感じますが。
桝田氏:まだゲームで表現されていない感情の動きで、マンガや映画では商品になっているのにゲームではまだないねっていうのものがあるから、そういうもののなかで、市場的に大きいもの、あるいはニーズがありそうなものを拾っていきたいっていうのはあったかもしれないね。
例えば『俺屍』のときだったら、日曜日の20時とかにいわゆる大河ドラマをやってるじゃない。大河ドラマって1年間の放送でものによっては100年ぐらい歴史をドラマとしてやっていたりするでしょ。短いものでも何10年か分を描いていて、世代が3つぐらい変わったりする。そういうゲームってまだないなって。
世代が変わるとか、先人のやったことが次の人のスタート地点になっていくとか、そういう神の視点でプレイするゲーム。その楽しさ、あるいはドキドキ感っていうのをシステムで表現したい。そういうゲームはまだあまりないよね。空いてる、空いてる……みたいな。
――なるほど。逆に、考え方がゲームに囚われていないからの着眼点だったりするのでしょうか。
桝田氏:そうかな。でも、たいていの商品ってそういう隙間を見つけてやっていくものでしょ。そこにこの価格でこういうふうなキャッチコピーで売ったら買ってくれる人がいるかどうか検証するのが基本で、普通は調査をするだろうし、まあ勘で勝負する人もいるし、自分で欲しいものを作ってるだけの人もいないわけじゃないけど。
それで、作るときに「僕は面白いと思うんだけど、どうだろう」って他人に聞いたりもするんだけど、そのときに僕と違う視点のアイデアが返ってきたりすると、これはイケる気がする、見込みがあるって思えるんだよね。
――たしかに、桝田さんのゲームは、人によって反応がすごく変わるものが多いかも。『勇者死す。』もそうですよね。
桝田氏:実は『勇者死す。』ってもともとはああいう形のゲームじゃなかったんだよ。『勇者死す。』って、魔王との戦闘で勇者が死にました、でも何日間かだけ生き返らせてもらいました、その間にいろんなことをやりましたっていうことが、未来と“過去に”影響するっていうシナリオなんだけど、本当はもう一本シナリオがあって、それは“勇者の誕生からいろんな仲間を集めて魔王を倒す”っていうところまでを描くやつがあった。その2本のシナリオが互い違いに入っていくっていう、そういう構想だったんだよ。
――すごく壮大な!
桝田氏:そう。でも作るのめんどくさいなって思って(笑)。
――えーっ(笑)。
桝田氏:作るのがめんどくさいっていうのと、その作らなかった魔王を倒すまでの部分って、ようは普通のRPGだから。普通のRPGを作ってもしょうがないし……いいかなみたいな。
――たしかに。でも遊んでみたいという気持ちも……。もし気が向いたらもう一工夫入れつつ『勇者死す。ビフォー』みたいなものをぜひ。
桝田氏:うーん、やっぱりめんどくさいから、それは他で作ってもらって(笑)。
――(笑)。なんらかの形で実現するのを楽しみにしています!
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