――『勇者死す。again』では伊藤賢治氏による新規メインテーマが追加されていますが、そちらはいかがですか?
桝田氏:あの、オープニングで流れている曲だよね。ああいうじっくり聞かせるタイプの曲って、イトケンとしては珍しいタイプの曲なんじゃない?イトケンって言ったらアップテンポの戦闘の曲有名だよね。
――『サガ』シリーズに代表されるあたりのバトル曲ですね。
桝田氏:うん。でもこの『勇者死す。again』のメインテーマは“イトケンはこういう曲も書けますよ”っていうのがわかる。さすがイトケンだなって思ったね。
――なるほど。ちなみに伊藤賢治氏との交流はけっこうあるのですか?
桝田氏:いやぁ、もう10年ぐらいは会ってないかも。メールはときどきやり取りしてるね。
――今回はメインビジュアルも新規で描き下ろされています。イラストレーターのクロサワテツ氏によるものですが、このメインビジュアルのポーズについて、桝田さんからオーダーがあったと聞いています。ユリアと勇者の“ピエタの構図”にこだわりがあるということですが?
桝田氏:まあ、“記号”だからね。記号っていうのは、例えば指を二本立てればそれはVで“勝利”っていう記号じゃない。手を握って親指だけ立てれば“いいね”。それと同じように、ミケランジェロのピエタ像の構図で“女性が死んでいる男性を抱いている”っていうのは、もうそれは世界中に通じる記号なんだよ。
桝田氏:ミケランジェロのピエタ像は、東京にある大聖堂にもレプリカがあったからね。 等身大のあれがドカーンと。イタリアにあるやつよりもきれいだったんだよ。そりゃそうだよね、最近に作ったレプリカなんだから(笑)。
――(笑)。レプリカだけでなく本物もご覧になったことがあるのですか?
桝田氏:30年ほど前に。あれはどこにあるんだっけ?ローマだっけ?フィレンツェだっけ?
――サン・ピエトロ大聖堂はヴァチカン市国内なので、言うなればローマ近隣ですね。
桝田氏:じゃあ新婚旅行だ。ミケランジェロってすごいのはさ、彫刻がリアルにできているだけじゃなくて、それを3メートルにしたときとか、2メートルにしたとき、“ここから人間が見たときにどう見えるか”っていうのを歪んでいる分も計算して彫刻にしているんだよね。だから正位置というか、自分の目の高さで見ると、思いっきり歪んでいるんだよ、顔とか。
――見る角度や位置が計算されているんですか。
桝田氏:下から見上げる用っていうことなんだろうね。
――そこまで考えられているとは、すごい。
桝田氏:すごいんだよ。やっぱりミケランジェロは本物の天才だよね。
――なるほど……。ゲームの方に話を戻させて頂きますが、追加要素には『ギャラリーモードの追加』というものもありますね。
桝田氏:アイテムとモンスターとイベントをコレクションできるようにしたんだよね。それもPS Vita版のときにユーザーさんから入れて欲しいっていう要望があったもので、今回はそれも入れているよ。
――こういうのは地味に嬉しいですよね。コンプリート要素を見て確認できますし。
桝田氏:そうなんだ。作っている側からするとアイテムもモンスターも作っている間に全部覚えちゃうから、そういうモードがあると嬉しいっていうことが意外とピンとこないものなんだよね。
――そして、これが注目どころかと思うのですが、今回は桝田さんによる追加シナリオも収録されているということで。
桝田氏:そこは言うほど増やしてないんだよね。言うなればエンディングの分岐を以前のものよりもちゃんとしてある。
――エンディングの違いが見所と。
桝田氏:『勇者死す。』って実は、子どもを作るっていう要素が最初はおまけだったんだよ。
「まあ、そういうこともできるよ」っていう程度だった。だけど時間を使ってプレイしてくれたユーザーさんにしたら、自分の跡継ぎが生まれたのに、それが国のその後にどう影響したかわからないというのが不満になるわけで、実際にそういう声がけっこうあった。なので今回は、子どもを作ったときに“その子がどうなったのか”っていうお話を追加しているんだよ。
――なるほど。その後が気になっていた既存ファンにとって嬉しいところですね。
桝田氏:まあ、自分がやったことに対して答えがあるっていうのは、普通に嬉しいんじゃないかな。ただ、必ずしも活躍するとは……限らないかもしれないけどね(笑)。
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